昨晩『DOLL FORUM JAPAN』の話題に触れましたので、今晩もまた関連のご紹介を。1998年のDFJ人形展は会員対象の小規模なものでしたが、全国的な人形公募展の開催を求める声が多く、2000年を迎える前年の1999年に六本木のストライプハウス美術館で「新世紀人形展」を開催しました。これはアメリカやロシアなど海外からの応募も受け付け、四谷シモンさん、辻村寿三郎さんという人形作家はもちろん、美術評論家、音楽家、舞踏家といった各方面からの専門家10人による個人の賞を競うコンテストにしました。ナタリア・ポペディナ、イマ・ナロディツカヤなど今はロシアを代表する作家もこのコンテストに応募していました。
新世紀人形展の図録『人・形・愛』は、くるはらきみさんの受賞作「伝説」を素材に表紙をデザインしました。
・くるはらきみさん
そのなかで精神分析医の藤田博史氏の賞を受賞したのがくるはらきみさんでした。普通に可愛い関節人形としてもいいところを、口のなかから花が生えた少女をフレームに固定し、独自の世界が感じられました。オーブン陶土を使った質感も特徴的です。それがくるはらさんの人形に伴う絵画のイメージと物語にあっていて、作品としての奥行きを深めています。そして、必ず愛らしい。本展のヤマタノオロチ君はくるはらさんとしては珍しく日本神話をテーマにしています。
・影山多栄子さん
17年間の『DOLL FORUM JAPAN』で人形として表紙に最後に登場したのは影山多栄子さんでした。DFJは17年間の発行を経て、人形の本質や人形に現れる日本人の特異性などを考え続けていました。特に「現代」「創作」のキーワードはある意味で人形の本質と正反対の位置にあるものでした。市松人形のような人形を作りたいと言っていた影山さんの目指す作風は、それに対する答えのひとつだったように思います。10年の時を経て、それは正しかったのではないかと思います。